数学をやって何が得られるのか

投稿者: | 2017年7月8日

私は、20年以上にわたって、大阪大学の数学教室というところに在職していました。この4月から、同じ大学の統計学の部門に異動になり、数学とは何であったのかを振り返るようになりました。統計も数学ではないかとおっしゃる方もいるかもしれません。何が違うのかをお伝えしたいと思います。

一番思い出に残るのは、10年以上前に代数曲線暗号で数々の論文を書き、博士を輩出したことでした。暗号というと、知らない人でも、「面白そうだ」という人がいますが、大変でした。やってみると、数論や代数幾何に関していうと、スタートラインに立つまでに3年は要するということがわかりました。つまり、あるレベルの人でないと参戦できない分野でもあります。その後、何度か国際会議に出席して、暗号というよりは数論の世界的に活躍している人とも知り合いになりました。数学者がどういう人種であるかということがまざまざとわかりました。

数学は、役に立たない学問ということで低く評価されがちですが、数学をやっていると、正しい結論を追求しているというプライドがでてきます。他の分野で、ヤマ感で、ガセのような結果を論文として発表する人や、証明を見ないでドグマのような命題を信じる人もいます。数学は、真偽を扱う学問で、証明ができてないことを口の外に出すことは許されません。

私のような数学から脱落した者がいうのも変ですが、このプライドを極力高くしていくことが、数学者としての成功の鍵になるといえます。女性で、美人の共通点の一つとして、自分のことを美人だと思いこんでいるということがあげられると思います。数学のできる人の共通点は、「自分が世界で一番頭がよい」と思いこんでいることだと思います。そして、数学という学問の発展に貢献するということは二の次で、「自分が世界で一番頭がよい」を証明するという別のインセンティブに動機づけられて、良い成果を出している人もいます。

現在の所属は、統計学といっても数理科学領域といって、数学出身の人が大勢を占める職場です。それでも、一般的な数学からみると、正直いって、スケールの違いに落胆することもあります。たとえば、既存の推定検定方法を最良のような扱いをしたり、流儀を押し付けたりすることがあります。「自分が世界で一番頭がよい」という数学者のプライドをもって、新しい統計学を創造できればと思いました。

 

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